TOP > 第23回 CSデザイン賞 一般部門 受賞作品
2023年12月から2024年3月までに募集を行った、「第23回CSデザイン賞」一般部門の各賞です。
募集作品:カッティングシートおよびそれに準ずる装飾用シートを使用したもので、2022年4月1日から2024年3月29日までに実際に制作された作品
応募点数:148点
受賞作品:13点(グランプリ1点/準グランプリ3点/優秀賞5点/中川ケミカル賞4点)
ディレクター/Liisa
マンガの制作法を用いながらも、言葉に頼らないで受け手に「経験」を与える作品を目指してきた。何がマンガたりうるのか、セリフや擬音を欠いたマンガとその物語性の可能性と限界はどこにあるのか――マンガの存立条件そのものも探りながら制作している。100年後にはマンガは美術史における重要なジャンルとして記録されていると予測できるものの、芸術とマンガには今のところ大きな隔たりがある。この歯がゆい状態は双方にとって大きな損失ではないか。逆に言えば、このトピックに探求の照準を合わせることで、漫画とアートもさらに進化させることができるかもしれない。
いまや廃れつつあるスクリーントーンを継続させたいという思いから、普段の制作で商業マンガに使われるインクとスクリーントーンで作品を制作している。「体感的」な経験をもたらす鑑賞では作品の物理的なサイズが肝心で、観客、作品、空間の三つの関係は、名作のひとコマに圧縮された劇性を伴いながら、マンガにはないスケールで融合する。それを可能にするために、今回は市販のスクリーントーンではなく、カッティングシートでトーンを自作した。異なる柄で影やグラデーションを演出する。重ね貼りで濃い部分や明るい部分の表現を分ける。全体的にコラージュ的感覚でカッティングシートを重層的に貼る。これらの手法を通じて、画材としてのカッティングシートの新たな可能性を探求していきたい。
今作に近づくと、連絡通路の真ん中に寝ている子供が呼吸していることがわかる。その隣に、絵の中の子供と同じ誕生日の帽子が落ちている。それは絵とどんなふうに関わっているのだろう。ふと疑問から始まる言葉のない物語。過去と現在、現実空間と架空の世界、静と動、ちょっとした懐かしさと違和感、没入と疎遠。様々な時空を往還しながら多様な解釈を思い浮かべられるインスタレーション作品に挑戦した。
※TOKYO MIDTOWN AWARD 2023 優秀賞 受賞作品
ディレクター/三宅 慶輔 [tyto]
デザイナー/三宅 慶輔 [tyto]
デザイナー/寒 友哉 [bubo]
クライアント/石井 昌生 [スタジオスリアン]
フォトグラファー/中辻 亮 [YOSO]
二階建ての倉庫をリノベーションし、フォトスタジオとした。一階は様々な目的で使用できるフォトブースを持ち、二階はコスプレイヤーへ向けたプライベートな撮影を目的としたライブステージが組まれている。被写体と撮影者の閉じた関係性だけではなく撮影時に観客をもまきこんだにぎやかな空間となるよう、一階にはフォトブース以外に多目的に使える緩衝スペースを設けた。モノクロで無機質な内装になりがちな業態ではあるが、できる限り倉庫の状態を活かしながら、非現実感を付加することで、観覧者を含む来客者全員にとってこの場所がシンボリックなスタジオになるようにデザインした。白と赤の二色をテーマカラーとし、扉を赤色のフィルムで装飾した。サインとして訴求力を高めるだけではなく、外部からの視線をある程度さえぎる役目を持たせている。わずか1㎜にも満たないシートを立面として二次元的に装飾しているが、透過性のある赤いフィルムは日光を受け室内を立体的に赤く染める。時間によりその角度や赤い範囲が移り変わり時間を感じながら空間の主役が変わっていく。夜には室内からの漏れ光が赤く街に伸び、その存在感をひときわ強くする。建築の内外に対し、グラフィックデザインとしてのシート装飾ではなく光を受ける媒体として作用することを目的としてこのようなサイン計画を行った。
ディレクター/脇崎 拓也 [MOTIVE Inc.]
デザイナー/脇崎 拓也 [MOTIVE Inc.]
建築設計/大成建設(株) 関西支店
クライアント/大成建設(株)
施工/大成建設(株) 関西支店
フォトグラファー/神藤 剛 [201 LLC]
大成建設関西支店のサイン改修プロジェクト。この改修プロジェクトは「グリーン・リニューアルZEB」と呼ばれ、日本政府が掲げている2050年のカーボンニュートラル実現のために大成建設が取り組む既存建物のZEB化を推進する事業で、大成建設グループが所有する建物で実践するプロジェクトのひとつとなります。オフィスビルの多くは各階が画一的な空間構成となり、階を上下動することによって利用者が現在階の認識を失うという特徴があります。また、利用者の多くは建物を日常的に利用するワーカーであり、何日か過ごせば空間に順応できるため、空港やショッピングモールとは違い「トイレがどっちか」といった情報はそれほどニーズが高いわけではないという特徴があります。
オリエンテーションデザインの目的は利用者が空間に順応することであり、こういったオフィスビル特有の情報ニーズを把握してデザインに取り組みました。このプロジェクトは賃貸型オフィスビルではなく大成建設関西支店のオフィスビルであり「グリーン・リニューアルZEB」を掲げた改修プロジェクトであることから大成建設のアイデンティティーやZEB(ゼロ・エネルギー・ビル)につながる表現を目指しました。大成建設の社名の由来には「衆の長所を集めて一大長所をつくる」という「集大成」の意味があります。社章には自然と調和してより高く、より深く、より広く活動する大成建設の経営理念が表現されています。
こういった大成建設のアイデンティティーとZEBのイメージから、高く深く伸びる一本の大木の年輪のような、中心から広く永く広がり続ける「サークル」をコンセプトにデザインを展開しました。
サークルはエントランスに掲げられた丸太から年輪の広がりの様に建物内に伸びていきます。各階のサイン表示はこのサークルを切り取る要領で表示され、上層階に上がるにつれてエントランス階からの距離が離れ、サークルの中心点から離れるため円弧が緩やかになります。
つまり円弧の緩急によってビルの階層の上下を表現する試みで、既存建物の改修プロジェクトのため様々な制約から色を用いずモノトーンのグラフィックのみで表現しています。
サークルが高く深く広く広がっていくように同社の益々の発展を祈ります。
原画・アートディレクション/五十嵐 威暢
デザイン/羽田 麻子
サインデザイン/羽田 健一 [ハダ ステュディオ]
インテリアデザイン/飯田 善彦、山下 祐平、
塚本 安優実 [アーキシップスタジオ]
照明デザイン/岩井 達弥、田部 武蔵
[Lumimedia lab Inc.]
クライアント/五十嵐威暢アーカイブ (金沢工業大学)
施工/ヨシダ宣伝(株)
撮影/羽田 麻子、對馬 康博
金沢工業大学のライブラリーセンター内にオープンした「五十嵐威暢アーカイブ」サイン工事にあたり、ふたつの自動扉のガラス面と収蔵庫のガラス面に衝突防止が必要になった。制約の多い既存建築の改修設計で選択されたのは床から天井まで繋がる美しい透明ガラス。危険は回避しなくてはならないが、ありふれた衝突防止を目立たせることもしたくない。それならばいっそのこと、五十嵐本人が描いた原画を新作のアートワークにしよう。わずかに透過するカッティングシートで、草原の風の流れを感じるようなアートワークが実現した。
ディレクター/色部 義昭 [(株)日本デザインセンター]
デザイナー/安田 泰弘 [(株)日本デザインセンター]
プランニング/Ginza Sony Park Project [ソニーグループ(株)、ソニー企業(株)、ソニー PCL(株)]
クライアント/Ginza Sony Park Project
プロダクションマネージャー/ソニー PCL(株)
施工/塩生 一博 [(株)脇プロセス]
フォトグラファー/岡庭 璃子 [(株)日本デザインセンター]
一時閉園したGinza Sony Park最後のプログラム「Sony Park展」の京都巡回展「Sony Park展 KYOTO」のキービジュアルおよび展示空間サインの制作です。展示プログラムを構成する6つの展示を6色のカラフルなアルファベットで表現し、バス停のようなサインを制作しました。サインを広大な展示会場の展示ゾーンごとに配置し、京都新聞工場跡地の空間に彩りを加えつつ、目印となる標識として人の誘導を促しました。また、工場にもともと貼られていた黄黒のトラテープをモチーフに、会場内に6色のトラテープを新規に設置し、遊びのある表現で動線として機能させ、工場のシズルを活かしつつ、Sony Park展の特色を取り入れたサインを展開しました。
ディレクター/長谷川 裕也 [(株)FiG]
横浜某所の会員制デザートバー、Constellation.
この街が放つ魅力は新しさだけでなく、保全された建造物や交易を行う為の街の構成等から感じる時間の深みに見られる。高次元の非日常空間を体現すべく、ステージとなるカウンターに到達するまでに異なる2つの空間を設けた。そしてそのどれもが、デザートやカクテル造りの中で行われるプロセスから導き出した意匠である。
-Layer-
この先の空間すら覆い隠すような、重層的なマテリアル。重なりによって生まれた鏡が映し出す、虹色の光に導かれるエントランス。
-Wrap-
ひとひらの布のような、ひと繋がりの壁と天井。無限に続く青の静寂に包み込みアプローチによって精神を現実から切り離す。
-Mold-
ボリュームが差し込まれるように構築されていく空間、形取ったようなディテールを持たせた客席。トリミングとオーロラフィルムによって、日常の景色が朧げになり、刻一刻と変化する壁画のように感じられる。
-Decorate-
飾ることによって際立つ物質の輪郭。そんな煌めきが感じられる個室。
戸惑いや驚きを重ねた時間が生み出す高揚感。
その先に待つ極上の空間体験を味わってほしい。
ディレクター/奥間 空 [半山(株)]
デザイナー/奥間 空 [半山(株)]
クライアント/半山(株)
施工/奥間 空 [半山(株)]
フォトグラファー/滝畠 豊美
作者は詩人としても活動しながら、言語を使ったアート作品の制作もしております。そして、言語を駆使してアート作品を制作するうちに「美術館やギャラリーなどの場にある言葉を使った作品は言葉を読みこむこと多少なりともストレスがかかるのではないか?」という仮説を打ち立て、〝言葉を読む作品〟ではなく〝言葉を鑑賞する作品〟ができないかと考えてきました。今作では前半は〝言葉を読む作品〟として詩人である自己を紹介し、後半から〝言葉を鑑賞する作品〟としてアーティストである自己を紹介する作品となり、詩人、アーティスト両方の奥間空を提示できる作品になっております。
ディレクター/鎌田 順也 [KD]
デザイナー/鎌田 順也、小山 桃、伏見 やよい、吉本 愛 [KD]
クライアント/ニセコ町
施工/(株)赤帽子
フォトグラファー/藤倉 翼 [エアバックス]
建築/村國 健、高橋 幸宏 [(株)アトリエブンク]
ニセコ町は、羊蹄山とニセコアンヌプリが特徴の自然豊かな町で、羊蹄山は富士山によく似たその整った姿から、蝦夷富士とも称され、北海道の代表的な山として認知されています。ニセコ町は子育て支援に力を入れており、子どもとの関わりを大切に考えていました。大人だけでなく、子どもたちにも町役場にもっと興味を持ってもらうことが重要だったのです。また、ニセコ町は環境モデル都市に認定されており、子どもたちにも環境意識を高めてもらう必要がありました。この役場のサイン計画は、サインとしての機能だけでなく、子どもたちに環境の大切さを伝え、子どもたちが積極的に役場に関わることができるよう設計しています。町長室は、ドアが動いて山の気候を表すピクトグラムになるため、子どもたちに人気の場所になりました。また、施設のいたるところに、地域に生息する動物や植物が隠れていて、子どもたちがそれを探すという仕掛けがあり、小学校の見学学習の核となっています。役場として前例のない取り組みが注目され、日本全国から見学者が訪れています。
ディレクター/鎌田 順也、栗本 裕介 [KD]
デザイナー/鎌田 順也、栗本 裕介 [KD]
クライアント/安平町立早来学園
施工/(株)シープ
フォトグラファー/岡庭 璃子
フォトグラファー/藤倉 翼 [エアバックス]
建築/菊池 規雄、青砥 由里香 [(株)アトリエブンク]
安平町は、マグニチュード6.7の北海道胆振東部地震で、家屋が倒壊するなど甚大な被害を受け、小学校と中学校が壊れて使えなくなってしまいました。このプロジェクトは、壊れてしまった学校を震災の復興のシンボルとして生まれ変わらせるプロジェクトです。「支える手、つなぐ手」という学校のデザインコンセプトに基づき、サインシステムに「希望を象徴した手」を使用。
教室の目印には、子どもたちが描いた様々な「支える手、つなぐ手」をレイアウト。町の復興を支えた人々の手、町の未来をつくる子どもたちの手を表現しています。また、各教室名は、新1年生として入学してくる子どもたちの書いた文字を使用し、「違いに寛容で最適解を見つける教育を大切にしていきたい」という学校の想いを表現しました。
インテリアの色彩設計は、1階を「安平町の大地」として緑や茶、菜の花をイメージした黄色を配し、2階は「安平町の空」をイメージした空色や夕焼けの赤紫などを配して、子どもたちの色彩感覚に訴えかけるインテリアになります。シートの色は、壁の色との組み合わせを考え、色彩が魅力的に見え、より色彩の豊かさを感じられる組み合わせを考え設計しました。
ディレクター/エマニュエル・ムホー [(株)emmanuelle moureaux]
デザイナー/エマニュエル・ムホー [(株)emmanuelle moureaux]
フォトグラファー/志摩 大輔 [ad hoc inc.]
43作目の「100 colors」インスタレーションは、東京の六本木の中心に位置する複合ビル、六本木ヒルズの開業20周年を記念して製作された。常に人々が行き交う超高層ビル、森タワーの麓に、100色の色彩を重ね、「記憶」の層を抽象的に表現したインスタレーションを発表した。
100色で彩られた層が織りなす、記憶を辿るインスタレーション。小さな数字が幾重にも重なり合い、年号が浮かび上がる。その年号は六本木ヒルズが開業した「2003年」から20年を迎えた今年「2023年」。現在を表す一番手前の層は「白」で表現され、残りの50層は奥に流れるにつれて年月が遡る「記憶」を100色のグラデーションで視覚化した。本作品は、51枚の大きな透明アクリルパネルに合計201,552個の年号を表す小さな数字を並べ、長さは12.5mまで達した。3次元のグリッドに完璧に整列された年号は、それぞれのアクリルパネルの表裏で正確に重なり合うように描かれ、アクリルの厚みと相まって更なる重なり効果を紡ぎ出した。浮かびあがる年号と100色のグラデーションの掛け合いが奥行感と密度を生み、カラフルで立体的な記憶の層を作り出した。そして、見る角度によって目に映る数字と色の重なりが変化し、さまざまな記憶の層に入り込むような感覚をもたらした。六本木アートナイト2023の一環として、夜にはインスタレーションがライトアップされ、昼間とは違った雰囲気を演出した。この色とりどりな記憶の空間に人々が集まり、思い出に思いを馳せる場所となるよう願いを込めた。
アートディレクター/村上 雅士 [emuni]
デザイナー/村上 雅士、太田 香織 [emuni]
クリエイティブディレクター/富永 省吾、綿野 賢 [LQVE inc.]
コピーライター/富永 省吾、綿野 賢 [LQVE inc.]
クライアント/東京クリエイティブサロン 銀座エリア実行委員会
エージェンシー/新東通信 + LQVE inc.
フォトグラファー/山城 健嗣
日本のクリエイティブを世界へ発信するイベント"TOKYO CREATIVE SALON"にて行った、銀座でのインスタレーション。和光や松屋など、銀座を代表する商業施設のショーウィンドウや壁面、仮囲いから地面に至るまで、あらゆる場所をグラフィックオブジェクトと現代詩でジャック。まるでビジュアルが街の中へ侵食しているかのような違和感によって、イベント会期中、街行く人々の視線を奪った。
デザイナー/松本 直也 [(株)松本直也デザイン]
ロゴデザイン/⻆谷 慶 [Su-]
カリグラフィー/田中 紗樹
クライアント/森口 誠 [(一社)暮らしランプ]
施工/古塚 亮平 [(株)創心社]
フォトグラファー/浅野 豪
アイコニックな大きな円にスリットを入れ視覚を緩やかに遮り、利用者にとって貝の中にいるような落ち着きのある場所を確保しながら、この街にとって開放的で親しみやすい「みんなの秘密基地」のような場所になればと考えました。もちろん円弧とテーブルはkaiだけに二枚貝イメージです。
ディレクター/星 幸佑 [(株)イトーキ]
デザイナー/彌島 知佳 [(株)イトーキ]
クライアント/宮本 康裕 [(株)イトーキ]
施工/岩田 真理子 [(株)大阪田建]
フォトグラファー/河本 茂晴 [(株)ジー・コンセプト]
イトーキ大阪ショールーム内にある、社員および来訪者が利用する会議フロアの改修計画。改修前の事務的な印象からの脱却を目指し、ニュートラルカラーをベースとした上質でホテルライクな空間を設計した。しかし、フロア中央に計画したブース形状のミーティングスペースという物は、しばしば、閉鎖的かつ事務的な印象を伴う。そこで、ブースを構成するガラスパネルに、IROMIZUのオレンジとグレーの重ね貼りで装飾することを計画。透明なニュアンスカラーでガラスパネルを彩ることにより、より開放的で上質な雰囲気を生み出した。さらに、色が付いたガラスは、開放的でありながらブース間の心理的距離の確保にも質する。「打合せの場」としての機能性と、「空間演出」としてのデザイン性が両立したミーティングスペースを実現させた。